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NEWS 2018.02.16 オーストラリア訪問記2018

NEWS オーストラリア訪問記2018

2月8日
AM
Rosehill Gardens Racecourseへ。
シドニー4競馬場の一つ(他はRoyal Randwick、Canterbury Park、Warwick Farm)

2階建て厩舎やプール、ウォーキングマシンなど一通り揃っている。

 

今回、22連勝中、GⅠ14勝のWINXの調教師であるChris Waller Racingを訪問
Chirs Waller師は240頭を管理する豪州リーディングトレーナー。

彼の配下には複数のレーシングマネージャーとその下にアシスタントマネージャー、さらにその下に厩舎長が置かれ240頭を管理する組織ができている。
厩舎は20頭を一つの厩舎として雄・セン馬厩舎と雌馬厩舎に分けられ、Rosehill Gardensでは約140頭を管理している。

厩舎は天井が高く開放的。夏は扉を開け風の通り道を作り、さらにミストを噴射することですずしく、冬は扉を閉じ寒さを防ぐ。

 

 

 

馬房は4×8mほど(2×4間)と日本の2倍以上の広さ。敷料はシェービング。

また、周囲の馬房とはフェンスで仕切られ風通しだけでなく他の馬が見渡せることで馬が落ち着く設計となっている。また厩舎には常に音楽やラジオをかけ意識的に馬をリラックスさせることに気を使っていた。実際、ほとんどの馬がおっとりしており寝てる馬も多く、馬房前を通ると嚙みついて来るような馬はいなかった。

ウォータトレッドミルは厩舎裏に設置されている。

傾斜を付け、時速5~7kmほどのスピードで全身の筋肉、関節、腱の冷却を目的とし、レースや追切後の疲労回復に使用している。

高さ2mほどの冷蔵ウォータータンクから4℃に設定された水を供給している。

また水は食塩水を使用しフィルターを4回通すことで皮膚病を含めた衛生面にも気を付けている。導入前はレース後に馬をビーチへ運び肢元を冷却していたらしい。

ウォータトレッドミルの隣に高速トレッドミルが設置されている。

こちらはエクワインレーシングで使用しているトレッドミルの旧型。
レース数日後からの調教再開時に積極的に活用している。

基本メニューはダグ(4%、3min)+時速24㎞(4%、5min)

または

ダグ(4%、3min)+時速32㎞(4~6%、4min)
Chirs Waller師は1歳馬の場合、初期馴致に4週間、トレーニングに12週間、その後に能力試験を2回実施しレースへと進めているとのこと。

 

最後にはWINXも見せていただいた。雌馬でありながら馬体重は530㎏。胸が深く伸びのある馬体でありながら後駆にもしっかりと筋肉がついている。脚向きも良く、腱、関節もすっきりしている。何より健康的な馬体で品のある顔立ちが印象的だった。

その後は競馬場エリアへ移動。

芝コースは青々としている。

馬場は最内から①ダグ専用ダート馬場②オールウェザー③芝④ポロトラック⑤芝(本馬場)の5コース。本馬場は一周2200m。

オーストラリアの馬運車は横からの積み下ろしが基本

最大6頭積めるところは日本と同じ

 

 

2月8日
PM
午後からはInglisセール会場へ。Inglis classic yealing saleは血統、馬の質ともにお手頃なセリであり(例年では最高価格が$200,000ほど)日本でいうサマーセールに近い。
本年から会場がWarwick Farmへ移動し新設されたRiverside Stablesがメイン会場。

The William Inglisの1階にはセール会場とレストラン、1,2階にBarがある。

3階からホテル客室で屋上にプールがあり眼下には競馬場とセール会場を見渡せる。当然客室からも競馬を見ることができる。

Riverside Stablesはそのホテルを中心に近代的な設計で11厩舎が配置され、厩舎前にはアスファルト、人工芝、土の3レーンがあり多くのバイヤーが同時に訪れても対応できるつくりになっている。また厩舎からセリ会場へも導線もきれいに考えられている。

シャンデリア照明や馬房の仕様がゴージャスな特別厩舎(The Big Barn)が一つだけあり、Arrowfieldが使用していた。

牧場スタッフの半分(むしろ女性スタッフの方が多いと感じるほど)が女性スタッフで生き生きと働いている姿がとても印象的。
短パン、シャツ、スニーカーまたはデッキシューズが基本スタイル。
コンサイナー業が盛んな事も要因か、馬体コンディションの低い馬、神経質で触れられない馬などはいなかった。
オーストラリアは夏季の日差しは強いものの、一年を通して気候に恵まれており冬でも雪は降らない。その為、出産も放牧地で行うなど、基本的に24時間放牧地で過ごしている。離乳後に2週間ほど厩舎に入れたのち、再び24時間放牧。そしてイヤリングセール2~3カ月前にコンサイナーへ移動する。

新種牡馬が多くマイナー血統という点も含めリザーブ価格の予想が難しかったが、現地で走らせる牝馬に狙いを定め100頭ほどの様々な血統(FairyKing系かDanehill系が多いが)馬を視察した。

Inglisセールを訪れる日本からの訪問者は数組のみだが市川ジョッキー、厩務員の村田さん、島調教師、タスマニアで調教師をされている西谷調教師などオーストラリアで活躍されているホースマンとも交流した

2月9日
AM
前日に引き続きInglisセール下見。

I AM INVINCIBLE、ZOUSTAR、RUBICK、PIERRO、SMART MISSILE、SO YOU THINKなど約20頭を視察。

REPOSITORY登録の後、候補馬のレントゲンをチェック。レントゲン提出枚数は36枚。

日本との違いは①蹄骨(外内像1枚)の提出②前肢球節外内像が屈曲で提出(米国と同じ)③前膝外内像が屈曲で提出(米国と同じ)④大腿骨内側ボーンシストを狙った真横像の提出は無し⑤外内、斜め像、左右肢が左右反転で提出などの5点。解読不能な質の悪い画像の提出率は日本より高い。事前内視鏡検査は任意だが提出されているものはレポジトリールームで見ることができる。このセリでは落札後に内視鏡検査を実施しグレード3以下のものはキャンセル対象となる。

16時過ぎまで下見を行った後、CANTABURY PARK競馬場へ移動
CANTABURY PARK競馬場はシドニー4競馬場の一つ。1周約1600m、直線約300mのコース形態でGⅠは開催されないものの、平日にナイター競馬が開催されている(West Tigers Summer Night Race Meeting)。本日の一般レースの賞金は約$20,000。メインレースは$43,140)。
第1レース発走は18時15分、最終レース発走は21時45分。レース間隔は30分で1550m、1250m、1900m、1550m、1900m、1550m、1100m、1250mの8レースが開催された。

各レース出走10分前にパドックに出走馬が登場し周回は数分で終え、すぐに返し馬へ向かう。現地の方はパドックをあまり参考にしないらしい。
馬券は主催者側であるTABと複数のブックメーカーのどちらからも購入することができる。馬券の売り上げは単勝、複勝がメインで馬連、馬単、ワイドの売り上げは低い。

場内には屋台が並び、多くのお客さんがビールを片手に楽しんでいる。
小さな子供を連れたファミリーも多く訪れるなど大変居心地の良い競馬場。

 

2月10日

前日に引き続きInglisセール下見。最終候補に残した7頭をチェック。合間に日本人バイヤーから依頼を受けたレポジトリールームでのレントゲンの診断を数頭。

午後からはセリ会場の隣、Warwick Farm競馬場にて開催されている競馬を観戦。1周約1900m、直線約300m。コースはおにぎり型でスタンドは1つのコンパクトな競馬場。
本日はInglisセールに上場された馬限定レース(優勝賞金$142,250)やコンサイナー協賛レースなどInglisセールに関連したレースが含まれ賞金は高額。第1レース発走は12時45分、最終レース発走は17時45分。レース間隔は30~40分。
1100m、2400m、1100m、1200m、1200m、1200m、1200m、1600m、1000mの9レースが開催された。

スタンド1階にはブックメーカーの販売所、2階はメンバーズエリア、3階が一般席となっている。

コース脇の芝生には日差し除けと椅子、テーブルが並び、多くの客がビールを飲みながら観戦している。

18時からはいよいよセリがスタート。競馬場に隣接したRiverside Stablesでの初のInglis Classic Yearing Sale。

セリ会場には購買者用にテーブル席が設けられアルコール類とビュッフュ形式の食事が提供されている。購買者は関係者との談笑を楽しみながら和やかなムードでセリが進行する。

会場2階にはビッグバイヤー向けの個室が用意され、個室からのビットも可能。また、落札者には祝福用にシャンパンボトルがプレゼントされる。
初日は120頭が上場。Lot.58~120はGold Riband Sessionとされ2歳戦の最高峰ゴールデンストリッパーに出られそうな馬が集められ、その馬が購買された場合にはInglisがそのレースの予備登録料を負担する。他国へ輸出する場合には関係ないが、現地では人気のセッション。実際、Gold Riband Sessionを含めた初日トータルの売却率は89%、平均価格$132,970。Gold Riband Sessionに限ると売却率95%、平均価格$163,571。事前の予想を上回る世界的好景気を感じるセリは22時まで続いた。

2月11日

本日も晴天で絶好のセール日和。セリ2日目(book1)に挑む。今回の大本命、I AM INVINCIBLEをはじめZOUSTARなど数頭にビットするが敗退。
下見段階で候補に挙がった馬もレントゲン所見でアウトになるなど。上手くいかない。

最低でも落札できると予想していたSmart  Missileも落とせず意気消沈で2日目は終了。
3日目へ勝負することになった。

2月12日

セリ3日目(本日までがBook1)
本日も快晴。気温は30℃程だが湿度が低く過ごしやすい。

実は前日までに落札出来ると思っていたので本日上場馬の下見が不十分。そこで前半部を下見時間に割き、後半Lot450-600の中からピックアップすることに。

 

種馬、性別、馬体そして予想価格とレントゲン検査に合格した候補数頭に絞りビットするも敗退、敗退の繰り返し。

しかし、ついにLot530 父SHOOTING TO WIN(母MISS DOUBTFIRE)の牝馬🐎を$80,000で落札🤝
本馬は2016年10月9日生まれ。同世代の日本の馬(北半球)達とは半年のハンデがある。
過去の豪州産馬にはキンシャサノキセキ、メラグラーナなどの成功事例はあるものの、本馬の場合は日本への輸出はリスクが大きいと判断し、豪州にて走らせる予定にした。
預託先である調教師にも快諾していただきCHRIS WALLER厩舎所属が決定した。

2月13日
本日までセリは開催(Book2)されているがセリ会場へは向かわずシドニー4競馬場の一つ、Royal Randwick競馬場へ。

シドニー市街から5~6㎞ほどに位置し1周2,254m、直線約400m。

開催日ではないため、観客スタンドへの入場はできなかったが新しい大きな観客スタンドが目立つ東京競馬場に雰囲気の似た競馬場。観客スタンドの横には巨大駐車場が建設中。

その駐車場と馬場との間に馬運車の積み降ろし場とレースを控えた馬の待機所がある。待機所の床と壁はゴムでおおわれており、安全性は高い。待機所は鉄パイプで隔たれただけの簡素なつくりでレース2時間前までにはこの待機所に集合することが義務付けられている。多くの馬が大人しく繋がれてレースを待つが、うるさい馬は待機所にて引き運動が行われる。

Randwick競馬場の馬場は最内から①ゲート用芝コース②サンドコース③Bグラス馬場(追い切り用)④スティーブルグラス⑤ダート⑥芝(ケンジントン)⑦芝(コースプロッパー)の7つあるがケンジントン芝コースは芝の根付きが悪く2年間使用していない。競馬は大外のコースプロッパーにて行われ、重賞勝ち馬のみ使用が許可される。

競馬場の南側には厩舎が並び、そのうちの一つ、Anthony Cummings厩舎を訪問した。

厩舎地区にはウォーキングマシンもあるが共同使用のため、使用時間が厩舎ごとに決められているらしい。また、ウォーキングマシンのタイプも10頭用や幅の狭いもの、馬が飛び越えられると感じるほど仕切りの低いものなど様々のタイプが使われている。

厩舎はChrisWaller厩舎ほど広くはないもののフェンスで隔たれており、風通しの良さと他馬の顔が見られる造りになっている。

また暑さ対策として天井にはファンが取り付けられている。厩舎脇には砂浴び場(パドック)やパドックと繋がっている馬房もあり、馬房内で動き回る馬、太りにくい馬のストレス軽減馬房として利用している。

今回訪問したAnthony Cummings厩舎ではトレッドミルも積極的に活用しておりトレッドミルだけでレースに出走させる馬も多い。トレッドミルトレーニングの一番の使用目的は背中を痛めている馬へのトレーニングとのこと。

通常は時速12㎞ダグ(4%、6分)+時速20~22㎞キャンター(4~5%、4~5分)

追い切り時は時速32㎞ギャロップ(4~5%、1分)を3セット

インターバルはダグ1分+常歩2分

または

時速38㎞ギャロップ(4~5%、1分)を1本というメニューを消化している。

 

蹄鉄は調教時は鉄だがレース時はアルミニウム鉄に履き替える。装蹄作業は馬房内で進められ、蟻洞や蹄の薄い馬など蹄疾患が少なくエクイロックス装蹄は稀らしい。

セリ会場も競馬場も馬房から排出されたボロは赤いポリバケツに入れ厩舎前に置かれ、調教時間外にポリバケツはトラックが回収する

 

厩舎サイドの東側には競走馬用のプールもあり行列ができるほど活用されている。プールは塩素消毒されており、透明度も高くきれい。

Anthony Commings厩舎ではトレーニングというより筋肉をほぐす目的で利用しているとのこと。 Inglisセールと競馬場視察は予定通り終了。

今回の旅でお世話になった現地在住の市川ジョッキーと村田さん、そしてInglis overseas representativesの岡さん他、知り合えた方々に感謝いたします。
今回購入したShooting to winの牝馬の活躍を楽しみにしています。