NEWS 2019.03.14 オーストラリア訪問記~2019年~
NEWS オーストラリア訪問記~2019年~
2019年2月10日から4日間、オーストラリアを訪問しましたので簡潔にご報告します。
今回の目的はInglis Classic Yearing Saleでの馬の購入と休養牧場の視察です。
今回の滞在先はCoogee Bay Hotelです。1泊2万円ほど。
目の前にはCoogee Beachが広がり周囲にはレストランも多く大変過ごしやすいホテルです。
Inglis社の提携ホテルであるCrowne Plaza coogee Beachがすぐ近くにあり、ホテルとセリ会場との無料シャトルバスが運行されています。
Classic Yearing Saleは2月9日から始まるBook1(初日のみGold Riband Session)からBook2である2月14日まで5日間開催され1013頭が上場されます。
Gold Riband Sessionは2歳戦の最高峰ゴールデンスリッパーに出られそうな馬が集められ、その馬が購買された場合にはInglisがそのレースの予備登録料を負担する。他国へ輸出する場合には関係ないが、現地では人気のセッションです。
全てのセリ馬は上場2週間前から会場に集められており、購買者は目的の馬を厩舎にて個別に確認します。
HBA市場のような集合展示はありません。
今回はセリ4日目、12日の上場馬220頭の中から種牡馬成績、産駒の平均売却価格、購入予算から半分ほどを事前にピックアップ。11日に実馬確認を行いました。
昨年の同セール(book1のみ)は売却率94%、平均売却価格$93,231、中間値$75,000と好景気でしたが初日からの成績を確認すると昨年ほどの勢いはない様子。
事実、本年(book1のみ)は売却率83%、平均売却価格$75,322、中間値$50,000と前年比大幅ダウンでした。
また昨年より円高も進んでおり(85円→80円)、日本のサマーセールが平均価格570万円、中間価格440万円ですから頭数、内容ともにサマーセールと同程度の市場と考えられます。
スタッフは短パン、シャツ、スニーカーやデッキシューズスタイルでの女性が目立ちます。
特に馬を引く仕事は女性の方が活躍されています。
基本的にきちんと躾されており扱いやすい馬が多いですが、セリ場に数週間滞在するため、中にはコンディションを落とす子もいます。
厩舎はThe Big BarnからB,C,D,E,F,G,H,I,J,Kの11厩舎に分かれています。
導線が明瞭な厩舎つくりの為、端から端の厩舎への移動、たとえばK厩舎からF厩舎までの移動も徒歩3分程度です。
移動時間がほとんどない為、大変効率的に見ることが出来ます。
下見中にはニュージーランドで乗り役(World Rider at Luca Cumani)のSai Yusukeさん(翌月にニュージーランドダービー優勝)やRandwick競馬場で厩務員のMurata Yumaさん、ビクトリア州Ballarat競馬場を拠点に開業しているShima Yoshitomo調教師、Chris Waller厩舎所属の Ichikawa Yusukeジョッキーなどオセアニアで活躍されている日本人ホースマンとも情報交換を行いました。
レポジトリールームで候補馬のレントゲンをチェックし本日の業務は終了です。
2月12日 セリ当日
シャトルバスに乗りセリ会場であるRiverside Stablesへ
前日から目を付けていた数頭を再チェックし、まずはlot734のTime For Warの牡馬を入札することに決めました。
上限を$60,000と設定していましたが、数人とのビット争いの末に$44,000で落札。
昨年より市場価格が下がったこともありますが、I AM INVINSIBLEやZOUSTAR、DEEP FIELDなど人気種牡馬を避けた点も上手くいきました。
父TIME FOR WARはSNITZEL産駒でG1勝ちはありませんが短距離を中心にATC Pago PagoS G2 など重賞を2勝、獲得賞金$470,950です。購入した2017年世代が2世代目になります。
初仔のため小柄ですが馬体の良さと歩様に魅力を感じました。
落札後、Chris Waller調教師に相談したところ快諾。
昨年に続きこの子もChris Waller厩舎への所属が決まりました。
オーストラリアでは日本と同様、レポジトリールームにレントゲン画像が置かれています(↑写真は2018年撮影)
しかし内視鏡動画の提出率は高くありません。
そこで、こちらでは落札後に内視鏡検査を希望することが出来ます。
併せてアナボリックステロイドの検出目的とした血液検査も希望できます。
内視鏡検査では喉頭片麻痺を対象にLane Bain Fallon Proceedings1993によるグレード4または5、日本(グレードⅠ~Ⅳ)でのグレードⅢまたはⅣがキャンセル対象になります ↓
また血液検査でアナボリックステロイドが陽性の場合も検査結果判明から24時間以内にキャンセルが可能です。
本馬も事前に内視鏡動画は提出されていなかったため確認はできませんでした。
そこで落札後検査を依頼します
検査希望者は落札時の書類に「SCOPING」と「BLOOD TEST」希望にチェック(YES)するだけです。
内視鏡の結果は落札から1時間以内に携帯メッセージとして連絡が入ります。
血液検査は落札から10日後にEメールにて連絡を受けました。
どちらも問題なしとの連絡を受け一安心です。
Crowne Plaza Coogee Beach Hotel行きのシャトルバスに乗り
本日の業務は終了です。
2月13日
予定通り馬を購入したのでセリ場へは向かわずRosehill Gardens競馬場のChris Waller厩舎を訪問しました。
厩舎には音楽をかけ、馬房には暑さ対策のミストを設置。馬が快適に過ごす事を意識しています。
馬房も広く馬はとてもリラックスしています。
また、飼葉量や体温などをipadにより管理しており異常値を示した個体情報はトレーナー、マネージャーへ自動的にメール連絡されます。
このシステムは最近導入したそうですが、今後トレーニングメニューなどの個体情報も入れることで個体情報を一元管理することが出来ます。
Rosehill Gardens競馬場は調教場としての役割もあり、本馬場(芝)、ポリトラック、サンド(右回り)、サンド(左回り)など6つの馬場を備えています。追い切りはポリトラックと本馬場の頻度が高いそうです。
大外の本馬場
こちらの芝は茎が太く絡みあっています。高いクッション性があり日本とは異質の芝です。
一方メンボルンは寒いので日本の芝に近く、オーストラリアでもシドニー、ヴィクトリア、クインズランドなど各州により気候に合わせた品種となっています。
ポリトラック馬場
サンド馬場
Chris Waller厩舎事務所にはWinxやZoustarなど歴代管理馬達のGⅠ優勝写真がズラーっと並んでおり、調教師をはじめとしたチーム力の偉大さを感じます。
午後は車で2時間ほど移動しBerryにあるBoynton Parkを訪問
BoyntonParkはChris Waller厩舎の休養馬の放牧先となっており場内にはウォーキングマシンや発馬機が設置されています。
また、自然勾配を利用した1マイルの坂路もあります。坂路にはラチはおろかダートの深さも一定では無く、まさに自然の坂路です。
馬は小さい放牧地に1-2頭で24時間放牧されています。
放牧といっても草は殆ど無く小学校のグラウンドの様な状態です。
骨折などの休養馬はここで軽く乗り進めてから厩舎に戻すそうです。
ちょうど1年前、Classic Saleで購入した『Nanakorobi Yaoki』Shooting To Winの子もこちらに放牧されています。
昨年末のトライアルレース直前に球節を痛めて放牧に出ているのです。
そして放牧中に右の腰角を外傷するアクシデントもあり復帰が遅れています。
運動不足から筋肉は落ちてきますが穏やかな顔つきから体調は良さそうです。
デビューを前に早くも1転びですが、まだ2歳です。ここでしっかりと傷を癒し、トレーニングを再開したいと思います。
以上が今回の視察報告です。
Nanakorobi YaokiとTime For Warの牡馬の活躍を楽しみにしています。